R4 こころの健康コラム(その3)を掲載しました

ゲートキーパー研修動画の監修に参加して

              愛知県臨床心理士会 副会長

坪井裕子(名古屋市立大学)

 2020年初頭からCovid-19 の感染が拡大し,感染予防のための行動制限やマスク生活等の不自由な暮らしが2年を越えてきています。現在,第7波に入って感染が再拡大しており,まだまだ先の見えない不安が世の中全体を被っているようです。コロナ禍で,芸能人などの自死のニュースが相次ぎ,心を痛めた方も多いことでしょう。厚生労働省(2022)による我が国の自殺者数の推移を見ると,平成15(2003)年の34,427人をピークに,平成21(2009)年度からは徐々にその数は減少傾向にありました。コロナ禍前の令和元(2019)年度の自殺者数は20,169人でしたが,コロナ禍となった令和2(2020)年度は21,081人と増加に転じました。令和3(2021)年度は21,007人で,前年度より少ないもののコロナ禍前と比べると増えているといえます。男女別にみると,女性は2年連続の増加となっています。男性の自殺者数は減少傾向にあるものの,女性の約2倍となっています。このような状況の中,自殺防止のためのさまざまな対策が講じられています。そのうちの一つとして,「ゲートキーパー」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。

 このたび愛知県臨床心理士会では,名古屋市健康福祉局の作成するゲートキーパー研修動画の監修に携わる機会を頂きました。私も臨床心理士会の仲間とともに,この動画の監修に関わらせて頂きました。そこで,この研修動画を皆様に知っていただきたいと思いましたので紹介いたします。

 この動画の中で,ゲートキーパーとは,「悩んでいる人のサインに気づき,声をかけ,話を聴き,必要な支援につなげ,見守る人」という紹介をしています。特別な専門家だけではなく,誰もがゲートキーパーになり得るのです。心理的な問題や生活上の問題,健康上の問題などを抱えている人が,自殺の危機に陥ることを防ぐために,ゲートキーパーの存在が大切な役割を果たすとされています。ゲートキーパーの役割として,「気づく」「傾聴する」「つなぐ」「見守る」の4つを挙げています。

 名古屋市のゲートキーパー研修動画では,大切な人の心を支える「ゲートキーパー」について,いのちの支援広報キャラクター「うさじ」と「ぴよ吉」が解説しています。実は,今回の動画の前に「ゲートキーパー養成研修Web学習」についても監修させて頂いたことがあるのですが,そのストーリーの中で「うさじ」は気持ちが落ち込んでしまったことがありました。そんなとき,友人の「ぴよ吉」が「うさじ」の変化に気づき,心配して声をかけ,話を聴いたり寄り添ったりしました。相談機関に繋ぐために,名古屋市のホームページ「こころの絆創膏」(https://www.inochi-akari.city.nagoya.jp/)の紹介もありました。そうして「うさじ」は相談機関に繋がっていくというエピソードが今回の動画の背景にあります。「ゲートキーパー養成研修Web学習」(https://gatekeeper.inochi-akari.city.nagoya.jp/)では,クイズ形式で学べるようになっていますので,こちらも是非ご覧いただければと思います。

 さて,今回監修させて頂いたゲートキーパー研修動画では,はじめにオープニング(約9分)として共通編があります。ここでは,自殺に関する基本的な事柄が説明されています。まず統計からみた自殺の状況を説明しています。例えば,先進国の中で日本の自殺者数が多いこと,10代から30代の死亡理由の1位が自殺であることなどです。さらに,ゲートキーパーの役割と今なぜ必要とされているのかについても説明されています。その次に家庭編(約14分)・職場編(約16分)・学校編(約14分)の中から関心のあるシチュエーションのロール・プレイング動画をご覧頂けるようになっています。各編ともゲートキーパーの実際の対応(声のかけ方や話の聞き方など)について,まず良くない例,その後に良い例を紹介する形になっています。ゲートキーパーといっても,家庭編では妻,職場編では同僚,学校編では友達が,その役割を担っています。身近な人が誰でもゲートキーパーになれるということが、伝わりやすいのではないかと思います。

 今回の監修に当たっては,いくつかの留意点がありました。一般市民の方々がご覧になるということで,専門的な用語はなるべく少なくし,わかりやすく説明するということをこころ掛けました。ちょっとした言葉の使い方についても,頭を悩ませました。動画のナレーション録音にも立ち会わせていただいたことで,動画に登場する人物の台詞の言い回しや,声のトーンなどにも配慮が必要であることを学びました。また,いろいろな意味で,多様性に配慮するということについて,細かく考える機会となりました。

 この動画をさまざまな場面で活用していただき,ゲートキーパーについて多くの方に知っていただけたらうれしく思います。誰にでも,心が苦しくなることは起こりうることです。そんなとき,お互いに思いやりを持って支え合うことができれば,生きていきやすい社会につながるのではないかと思います。


今回ご紹介した「ゲートキーパー研修動画」は以下のWEBサイトにアップロードされています。

https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000153257.html


また,ゲートキーパー研修動画は「こころの絆創膏」YouTubeチャンネルにあげられています。

https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000151014.html

 

QRコードからもアクセスできますのでご覧いただければと思います。

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文献

厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課(2022)令和3年中における自殺の状況,https://www.mhlw.go.jp/content/R3kakutei01.pdf

(2022年6月20日アクセス)

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