R2 こころの健康コラム(その5)を掲載しました

『双極性障害の当事者の私が、コロナ禍で思ったこと』

 

特定非営利法人 日本双極性障害団体連合会 副理事長

愛知県地方精神保健福祉審議会委員

特定非営利活動法人 草のネット ピアスタッフ

愛知県・名古屋市ピアサポーター

ピア活あいち運営委員会 代表

日本メンタルヘルス協会 心理カウンセラー

窪田 信子

昨年、芸能人の志村けんさんと岡江久美子さんが新型コロナで亡くなった事を知って、とても驚き、ショックを受けて気持ちが下がった後に、不安に襲われて、次に気持ちがソワソワして落ち着かない日々を過ごしていました。コロナにかかりたくないのは、誰でも一緒だと思いますが、精神疾患を持つ当事者は、その不安の度合いが数倍大きく、普段より更に生き辛くなっています。そして月に一度の精神科クリニックの診察日に主治医に相談しました。『自分がコロナにかかって、肺炎になって、苦しんで死ぬんじゃないかと思うと不安で仕方ないです。』と私が言うと、主治医の返事はこうでした。『その話を聞くのは今日、何人目かな?』えっ!?な〜んだ、私だけではなかったんだと思えたら、急に気が楽になった事を覚えています。私の今の主治医は、薬ではなく言葉で、いつも私の緊張をほぐしてくれるので本当に助かっています。

私は7年前、51歳の時に双極性障害Ⅰ型の診断を受けましたが、当時の主治医に『発病は10代の頃でしたね。』と言われました。双極性障害は、統合失調症と並ぶ2大精神疾患とされています。2大精神疾患と言うからにはメジャーな病気かと思いきや...。大きなギャップがありました。

その1 診断が難しく、誤診が多い。

その2 病気の症状が多岐にわたるので薬の処方がとても難しい。

その3 双極性障害に詳しい精神科医が、とても少ない。

その4 自己管理がとても重要な病気 等々。

今現在、双極性障害は悲しいかな、不治の病ですが、的確な診断と適切な治療を受けることが出来れば寛解に至る事が出来、普通に日常生活を取り戻す事も可能だと思いますが、残念ながら今現在、双極性障害を的確に診断して適切な治療を受ける事が出来ないという現実があります。2大精神疾患なのにこんな状況とは、本当にガッカリしています。

私は7年前に双極性障害の診断を受けた時、主治医に一冊の冊子を渡されました。それは製薬会社が出した双極性障害の病気についての冊子でした。その裏表紙にノーチラス会の連絡先が掲載されていたので、早速調べてみました。ノーチラス会は、日本で唯一双極性障害に特化した団体で、理事長は精神科医の鈴木映ニ先生です。勿論、双極性障害の専門医です。

ノーチラス会は鈴木理事長のお陰で、医療との結び付きがとても強い会です。私はノーチラス会と出会えた事で病気の知識が豊富になりました。そしてノーチラス会に救われたと今でも心から感謝しています。その感謝の気持ちをお返ししたくて、日夜ノーチラス会の普及に尽力しています。

そしてこの度、そのノーチラス会が、『令和2年度こころのバリアフリー賞』を受賞いたしました。ノーチラス会の活動は、毎月の会誌の発行、日本各地で行われている集い、毎年開催の講演会、電話相談は会員のみならず非会員の方にも行われています。私も昨年から、ピアカウンセラーとして相談員をさせてもらっています。

もし皆さんの周りに、双極性障害で困っている方がいましたら、『ノーチラス会』の事を教えてあげてください。ヨロシクお願い致します。

7年前から、「ノーチラス会名古屋の集い」というお話会を、2ヶ月に一度、名古屋市中スポーツセンターで開催してきましたが、コロナ禍で開催中止が長く続いています。

今後はリモート会議での開催を企画中です。今まで会って直接話をして、励ましあっていた仲間たちと、リモート会議で同じ様な事が出来るのかは疑問ですが、顔が見えるだけでも良い面はありそうです。

実はこのコロナ禍でいい事もありました。全国の集いがリモート会議での開催になったので、名古屋に居ながら東京のリモート会議に参加できました!普段なら出来ないことができて良かったです。

もう一つ、コロナ禍で大学の看護学部の精神科実習が中止になったので、急遽リモートで当事者の話を聞く授業に切り替わったため、奈良県の友達から、授業に参加しないかと連絡が入りました。断る訳もなく、若い大学生の皆さんと授業に参加させてもらって楽しかったです。

いつまでもコロナ禍が続いてもらっては困りますが、コロナ禍でもいい事探しは出来そうです。

最後に双極性障害になって、ノーチラス会と出会えて良かった事。診断当時、双極性障害という病名も知らなくて、お先真っ暗な状態の私でした。

ノーチラス会と出会ってから、名古屋でノーチラス会を立ち上げました。そうしたら、同じ双極性障害のたくさんの仲間に出会う事ができました。 また、日本うつ病学会総会が名古屋で開催された時、初めて当事者としてスピーチさせていただきました。今年3月には、『世界双極性障害デーフォーラム』にもリモートで登壇予定です。

双極性障害になったからこそ、今までとは違う人々と出会う事ができ、またいろいろな機会を頂けて本当に有意義に生きています。

コロナ禍でも悪い事ばかりではありません。今まで無かった出会いの方法で、遠くの人とも知り合うことが出来る様になりました。この先、リモート診療で、遠方の双極性障害の専門医の診察を受診できる様になると思っています。

コロナの影響で、今までの常識がいろいろ変わりつつあります。変化を恐れずに何か良い事を一つでも見つけて生きて行こうと思っています。

ありがとうございました。

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