こころの健康コラム(その2)を掲載しました

コロナウィルス下の精神科デイケア

愛知県精神医療センター デイケア 看護師長  高田 明

 

愛知県精神医療センター(以下当センターと略す)デイケアは70人規模のデイケア2つと児童デイケア1つを運営しており、毎日70~80人の利用者(以下メンバーと略す)が通所していた。朝の会に始まって、午前中のプログラム、昼食、午後のプログラム、終わりの会等毎日規則的に行われるメニューを限られた人員のスタッフで運営しながら、プログラムの合間を縫って行われるメンバーさんから寄せられる個別的な生活相談、就労支援、対人関係問題等多岐に渡る相談に対応して、気が付くと閉所時間が迫っているという毎日であった。

2月に起きたダイヤモンドプリンセス号でのコロナウィルス感染に始まる一連の対策に派遣された当センター医師の意見を基に病院独自にコロナウィルス感染予防対策が実施された。それにより3月上旬からはデイケアプログラムは全面停止となった。ただし、当センターでは長年にわたる歴史の中でデイケアメンバーの生活支援を重視する考えがある。したがって、生活支援、そして栄養の整った昼食だけでも提供できるように、デイケア自体は開所することにした。プログラム全面停止に至る準備期間に行ったメンバーさんへの説明では「自宅で過ごせる方は自宅で過ごしてください。ただし、日中の居場所がない方、食生活に非常な不安がある方、日常生活指導を必要とする方はデイケアに来ていただいて結構です。」と案内した。メンバーさんからは「いつ再開するのか」などの質問が多く出たが、大きな混乱も起きずにプログラム完全停止に至った。

その後約3か月間、デイケアスタッフは病院正面入り口で行う検温、コロナウィルス感染予防に沿ったプログラム運営方法の検討とそのマニュアル作り、メンバーさんから掛かってくる電話相談への対応などに追われた。また、デイケアに来所して1テーブルに1席だけ配置した椅子に座り、一人で過ごす少数のメンバーさんに対する配慮も怠りなく行い、不安軽減に努めた。

6月に入り、病院として徐々に行動制限が解除されていくに伴い、デイケアプログラムも再開された。それが、メンバーさんの利用も増え出席者が7割くらいの人数に回復したところで、8月中旬から再度感染予防対策に伴う全プログラム停止となった。再度のプログラム停止をメンバーさんに伝えると、TVなどで社会情勢を知っているせいか大した質問も出ずに了解された。現在スタッフは、来院者の検温を行う傍ら来所したメンバーさんへの生活指導、頻回に掛かってくる電話相談への対応に尽力している。

「いつからプログラム再開しますか。」メンバーさんからこの質問を毎日のように受ける。この言葉を聞くたびに、メンバーさんからは、一刻も早く「非日常の生活」からありふれた「日常の生活」に戻りたいという気持ちを感じる。ただ、これからのデイケア活動は感染予防対策を考慮した内容になるため、いくつかのプログラムはその内容を大きく変える必要が出てきた。そのことを丁寧に説明しながら、メンバーさんと共にプログラムを作り上げていく作業が必要である。

メンバーさんには日常的に人との交流を求めている人がいる。「正月休みなんてなくなればよい。デイケアに来ると人と話せる。アパートでは誰とも話さずじっとしているだけだ。」と言うメンバーさんもいる位である。また、積極的に交流を求めてくるわけではないが、集団の中にいることで安心感を得たいと感じている人もいる。一方で対人交流の取り方が身についておらず、トラブルを起こしやすいメンバーさんもいる。そのようなメンバーさんはプログラムのあるなしにかかわらず、来所の頻度に差はあるもののスタッフとのかかわりを強く求めてくる。昨夜OD(オーバードーズ:薬を過量摂取すること)してしまったメンバー、深刻な表情をして静かにスタッフに気づいてもらえるのを待っているメンバー、夫婦間の問題を相談してくるメンバー。そうしたメンバーに対して献身的に親身になって関わるスタッフを見ていると、デイケアの役割は、プログラムを実施することで参加メンバーの能力開発を促す役割と、プログラム以外でのメンバーとの関りから見いだされるメンバーの個人的問題解決能力を促す役割、その両者が大きなものであると再認識した。今後も、メンバーさんの社会生活の援助をする中で、病院に併設されたデイケアの特色を生かしながら、メンバーさん個々の個人目標の達成に向けて援助していきたいと思っている。

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